Diary

患者(金)、班長(土日)、教授(月)

隣組で不幸があり、昨夜は葬儀の受付等の協力を班の方一軒一軒にお願いして回りました。前班長がいろいろな確認をして下さっただけでなく、わざわざ一緒に回ってくださいました。夜間の訪問にも関わらず、班の皆さんが快く受けてくださってありがたかったです。小さなお子さんがいるお家も多いのに本当に頭が下がります。今日明日は葬儀の受付に行ってきます。あと仲良しのお隣のおばあちゃんの送迎も、いつもより丁寧な運転を心がけますよ。

都会やアパート暮らしの論理とは違うのですが、好きでここに来た以上いろいろ教えていただきながら覚えていきたいと思っています。いい年して本当に何も知りません。今は質問ばかりで、意見など持つのはずっと先のことと思っています。

群像新人賞の選評なんてめちゃめちゃ横柄で、講義では先輩社員みたいで、ラジオでは上州弁べらべらですが、町内のことでは全くの初心者なので誰も知らないほど腰が低いっす。別人のようだと思われるかもしれませんがご容赦を。

多分これで喉は治らないまま来週の講義に突入だなぁ。


悪夢と日常と関越道

喉をおかしくしてから手術後と同じ反応が出る。食べた瞬間の痛みと大量の寝汗。こっちは忘れてたのに神経が変に記憶しちゃってるのか、原因違うんだよ、風邪なんだよと言ってきかせたい。

そして5日連続で悪夢にうなされてる。結婚したけど全然嬉しくないとか、結婚したのに全く家に帰ってないという夢ばかり。夢くらい、頭髪に悩む繊細でセクシーなイケメンが出てくりゃいーのに、ちっとも好みのタイプが出てこないのはなぜだ。

今日は2ヶ月ぶりの立川の精神科通院。禿先生は南相馬市の避難所を回られたとのこと。私には「今回の震災は時間が長くかかります。火事場のバカ力でなんとかなるものじゃないのだから、日常の範囲で続けられることをやるように」。そして「まずその声を治してからね」。ほんと、先生の言うとおりだ。テンションが上がった時期に抗鬱剤を減らしたのは正解、さらに残りを2日に1錠に調整して様子を見るようにとのこと。

関越のドライブも久しぶり。行きは、北関東道が出来た影響で宇都宮ナンバーが多くてびっくり。群馬へようこそ。Nシステムとオービス間違えてブレーキ踏むなよ。帰りは足立ナンバーのクラウンのとっつぁんが遊んでくれた。クーペにかまってくれんのは嬉しいけど、追い越し車線で金歯食いしばるのはあんまりクールじゃねぇなあ。


アナタのハニー絲山秋子です、とか言うもんだから

一昨日は結局一日中寝ていました。微熱があったのかなんなのか、変な寝汗かいて起きて、また寝てっていう感じでした。仕事もできなかった。

昨日はFM。何人もの方がすすめてくれた蜂蜜をごくごく飲んで(たしかに効きますね!)、ひどい声だけど行きました。オンエア中はなんとかがんばれましたが、2時間番組終わったら完全に喉がつぶれて「あいうえお」と言おうとしても「あ…………ぉ」としか出ないくらい。そんな私に心配のメールをくれるのではなく、思い切りイジッてくれるリスナー多数、くやしいけど好きだよおめーら。

セレクションは上田正樹と有山淳二「かわいい女と呼ばれたい」、その他選曲はXTC「マイ・バード・パフォームズ」、ルー・リード「アイ・ラブ・ユー・スザンヌ」、エンディングはロビン・ヒッチコック「ファンキータウン」。

おすすめ本に新潮CDの「グスコーブドリの伝記」を紹介しました。今はそんな怖いもの読みたくないという人もいると思う、もちろんそういう方は読まなくて(聴かなくて)かまいません、ということを言った上で、それでも紹介する理由を言いました。今、ショックを受け、不安な思いをしている子供たちのなかから、今後必ずグスコーブドリのようにすばらしい科学者が出てくると思う、そのときに彼らがブドリのように命を賭けなくていいように、私たちは社会全体で支えなければならない、そういうしくみを作っていかなければならない、そんなことをお話しました。

申し訳ないけれど、今日のインタビュー2件はキャンセルしました。


ドとレとミの音が出ない状態

昨日の講義は、前期の作品研究の決定と、発表の仕方、次回講義の「記者会見方式インタビュー」のやり方、考え方など。研究発表も、実習も、とにかく前期のうちはむしろ大失敗するつもりでダイナミックな考察、アプローチをして欲しいことを話しました。例えば宇宙科学の理論などをイメージして、手堅くまとめるのではなく思いきった発想をした方が力がつくと私は考えています。まだ正式の履修登録が届いていないのだけど、全部で13〜15名という院としてはかなり多い人数の全員で議論し、体験を共有して実力をつけた上で、後期には個性を生かした新しい研究成果を出すことを目標にしたいです。学生はとても意欲的で、雰囲気もいいので、私も毎週が楽しみです。

その後「法政文芸」のインタビュー。こちらは学部生からのインタビューを受ける。

これだけで喉が完全につぶれてしまい、声が出ない。まさか木曜日に始まっ不調をここまで引きずるとは。明日はFMの生放送がある。5年間でこんな事態は初めて。本気でやばい。

お茶でうがいして、マフラーして、明日の昼まで誰とも話しません。(と言った端からピンポンが鳴り「後援会入りませんか」。「ごめんなさい」と断る私の声は壊れた楽器です)


先日の日記に書いた精神科主治医の禿先生、やはり被災地に行かれたようです。福島県相馬市です。私が片品村で微力ながら関わっているのは南相馬市の方々なので、なんだか嬉しいです。私がめちゃくちゃな時期に助けてもらった先生です。診察を受けられた方々の不安や不眠、苦痛が少しでも和らぎますように。(私も診察の予約入れなくちゃ)

ガラガラ声のままで今週は講義とインタビュー3件とFM。喉に関係ない仕事としては、エッセイの締切、小説の仕上げ、そして町内の配布物と集金あと2件。


作家の皮をかぶった営業マン

メーカーで営業してたのは(病気で休んだの除いて)10年間、小説家になってやっと8年。だから、FMで新しくなにかやろうとしたり、片品関係で動いたりすると、あっという間に作家じゃなくて営業マンモードになってしまう。物売りというんじゃなく、新規開拓で戦略考えるのが好きな営業でした。

提案ツールや企画書も必要というより、好きだから作ってしまう。いつも人と会わないのに、営業マンスイッチが入ると人と会うのが大好きになってる。んで飲み友達からは「作家やめたら、サワガニの養殖やりなよ」などとわけのわからんことを言われたりしてる。なんじゃそりゃ。

しかし、今日はモード変えて小説をむっつりむっつり仕上げていきます。

休肝日……と思ったんだけど、喉やられてて声ガラガラなので、頂き物の花梨のお酒はうすーくして飲むと思うなぁ。


フェロモンよりホルモン

昨日は集中して小説やって、そのあと大事な打ち合せしてアタマ使ったらどーにもお腹がすかなくて、最終的にコロッケ一個しか食わなかった。そんなわけで、起きるなり猛烈にホルモンが食いたいです。喉がおかしくて声が出なくて風邪も疑ったが、朝6時からホルモン食いたい風邪っぴきなんかおらんよ。

そろそろ薬の在庫もあれだし、精神科に電話してみたら数日前から17日まで休診。もし体調不良じゃなかったら、禿先生も心のケアとか医療支援とかしてるかも?(楽しい方だけど、実は偉い先生なのです)だったらこちらも嬉しくなるなあ。あくまで憶測ですが。

今日は東京から来てくれる方と同行で片品。

追記。本日の群馬県の天気。気象庁HPより「群馬県では、強風や竜巻などの激しい突風、急な強い雨、落雷、空気の乾燥による火の取り扱いに注意して下さい」そんな、さらっと竜巻なんて言うなよ、空気の乾燥と同列じゃねーだろが。おっかねーな。


花粉犬

今まで隠してましたが、私、ヒノキの花粉症です。なんで言わなかったか。だって私が言うと「ヒノキだと? 偉そうに!」とか「ブタクサみたいな顔して!」とか言われるからです。でも軽いので、日常生活ですごく困るってほどじゃないんです。ところがウチの外犬どもは、砂嵐みたいな春の風のなかでへらへらしてたり、日がな一日地べたでゴロゴロしてるため、朝晩の散歩のあとヨシヨシなんて撫でてやると毛皮に詰まった花粉がもうもうと舞い上がり、小一時間クシャミがとまりません。早くヒノキの季節が過ぎないかなあ。あと雨も降って欲しいよ。

花粉と関係ないけど、野宿してから猛烈に喉が痛い。犬に「おはよう」と言ったらロッドスチュワートみたいな声になってた。小説書くのに声が出なくてもなんにも困らないけど、大学とインタビューは困るな。さすがにFMの頃には治ると思います。タバコやめるとか減らすって選択肢はありえないので、メンソールでも吸ってみるかね。

今日は小説と、シネマテークたかさき打ち合わせ、情報交換。(っても、友達なんですけどね)


久々の野宿

会った人やラジオ聞いた人は知っているけれど、私はすごく変な声をしてます。だから県内だとどこ行っても「絲山さんでしょ」とバレます。顔は全然知られてないんですが。

昨日は片品の帰りに沼田で友達と飲んでたら、そんな感じで声かけてくれた粋で素敵なご夫婦と仲良くなりました。夜は道の駅で野宿(車中泊)。冬用寝袋でよかった、明け方はかなり冷えました。

今日は本業の小説やって、夕方FMぐんま打ち合わせ。昼寝もします、この年で車中泊はやっぱりきついですもん。


「そういう雑誌」のすること

週刊文春から、特別アンケート企画の依頼が来た。協力できない理由を伝え、編集部の承諾を得た上で、依頼のフォーマットの一部を転載します。

(以下引用)

 東日本大震災と巨大津波、そして原発をめぐるトラブル。日本人は今、おそらく戦後最大の難局に直面しているように思います。被災者はもちろんのこと、東京や西日本に暮らす人々の心にも深い傷が残り、また、今までないがしろにしてきた様々な問題と向き合うことを余儀なくされています。それでもなお、私たちは顔を上げ、前を向いて、未来へと進んでいかなければなりません。被災地の人々もそれぞれに懸命に悲しみを乗り越えながら、一歩一歩、前に進み始めているように感じます。

 

 スポーツ選手が、競技の前にヘッドホンで音楽を聴いている姿をよく見かけます。そうすることで「さあ、やるぞ」と心を奮い立たせているのでしょう。映画や本もしかりです。物語やそこで語られている言葉の力に背中を押されて前進することができた、そんなご経験を持つ方もいらっしゃるように思います。

 

  気分がふさいで元気が出ない時でも、この曲を聴くと前向きになれる。

 いつも手元にあるこの本のある一節を読んで、やる気を出している。

 映画やドラマのこのシーンを観るといつも胸が熱くなり、体が自然と動き出す。

 

 そのような「元気が出るとっておきの本、映画、音楽」があれば、いずれか1つで構いません。思い出話と共に小誌読者に是非とも御紹介いただきたく思っております。

(以上引用)

誰に元気になって欲しいんでしょう? 毎週悲惨なグラビアを見ていた人にさらに元気になって欲しいんでしょうか? 遺族はもちろんのこと、家族や親戚が被災地にいる人に元気になって欲しいんでしょうか? 大きな余震が続いて一旦回復したライフラインが寸断された人でしょうか? 避難先で地元の情報を探している方に元気になって欲しいんでしょうか? 過酷な現場で働いている自衛官や東電関係者、警察、消防関係の方の家族は元気になれるんでしょうか?

不特定多数が読むこと前提の雑誌のなかで、アンケートという「匿名の識者多数」からおすすめや、思い出話を押し付けられて、余計つらくなったり、疎外感を持つ人のことを考えなければいけないんじゃないのかい?

担当者は文芸にいた時代からとても親しくしていた、仕事の出来る好青年だが、「そういう雑誌なんです」と答えただけだった。「良識ってなんですか?」と聞いたけれど、答えてくれなかった。


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