Diary

2018振り返り

今年は2015年前後から手がけてきたことで、一段落したものが多くありました。大学の講義もやめ、ラジオも終わりました。(打ち切りは不本意でしたが)ネットショップのメルマガも終了、夜の絲山房も夏から休みましたがおかげでやっと本来の小説のための時間を取り戻せた気がします。去年までの仕事量ではあの厳しい夏は乗り越えられなかったかもしれません。
小説以外の活動では太田市美の「愛でるボタン展」への参加、JLPP主催の英語、仏語の翻訳ワークショップへの参加が特に印象深かったです。
群像『御社のチャラ男』の連載もこの時期に始めることができてよかったです。こちらはまだもう少し連載が続きます。
 
今年連載を終了した『夢も見ずに眠った。』(河出書房新社)と『絲的ココロエ』(日本評論社)はそれぞれ1月、3月に単行本化されます。
2019年は文藝春秋から出す予定の書き下ろし小説『とおい昔の旅のこと』に注力し、春ごろ(?)に単行本化できればと思っています。富山舞台となる逃亡くそたわけの続編も取材などをすすめていきます。
 
1月から、新刊の関係であちこちお邪魔したいと思っています。イベントで読者の方とお目にかかるのを楽しみにしております。
4月で絲山房もまる三年を迎えます。今までとは違うことも企てながら、楽しんで続けていきたいと思っています。具体的な案もいくつかあるので1月から動き始めます。
来年の前半は長期的に何をするかも考えながら、しかしあまり力まずに過ごしていきたいと思っています。個人的にはもっと旅がしたいです。
 
今年もお世話になりました。来年も一緒にたくさん笑えますように!
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


第15回絲山賞

絲山賞は、私が一年間に読んだ本のなかで一番面白かったものに対して個人的に敬意を表しているものです。「自分には書けないもの」を基準に、2004年から毎年12月に選んでいます。これまでの受賞作品につきましては当サイト「プロフィール」から「絲山賞について」をご参照ください。
 
第15回絲山賞は、内田洋子著『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』(方丈社)です。
イタリア山間部の村に、かつて本の行商を生業とする人々がいた。かれらはヨーロッパの出版や文化に大きな影響を与えたーーこの本のテーマである「旅する本屋の物語」は、調べれば調べるほど面白い、とても重要で奥行きのあるエピソードです。
でも、それだけではない。この本には著者の内田洋子さんにしか書けなかったと思わせる唯一感があります。日本から取材班が出かけて行ったのではなく、現地メディアによる紹介でもなく、イタリアで暮らすジャーナリストである著者が、人から話を聞いてこれまで知らなかった村に出かけて行った。つまり旅の話です。本を愛する著者の視線とフットワークによって村の良さもゆかりの人々の魅力も、どんどんひらいていくように感じられます。
当たり前のことを申しますが、旅というものは人間にしかできません。物が動くのは物流です。私たちが日ごろ、本という商品を買うことができるのは物流のおかげですが、なんだか本は今でも旅の方が相性がいいような気もしています。
過去の出来事が未来を照らしているように感じたり、遠い外国の話なのに自分が知っている日本の歴史や山間部に住む人の顔を思い浮かべてしまうのは、筆力の確かさと語りの良さからくるのでしょう。
この本はまさに、内田洋子さんによって書かれることを待っていたのだと思います。その奇跡に心からお祝いを申し上げたいと思います。


太田市美術館・図書館発行『愛でるボタン展 〜アイリスのボタンづくり〜』

 

 


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