2006/12/28 木曜日
絲山賞というのを、個人的に、毎年やっている。要は私が一年間に読んで一番面白いと思った作品を公表するというもの。一昨年は古処誠二氏と町田康氏、昨年は赤染晶子氏にさしあげた。さしあげたって言っても、ここに書いてるだけで、受賞者に通知もしなければ何も出さない。名誉でも不名誉でもない賞です。
ということで、今年は第三回。多和田葉子氏の「海に落とした名前」(新潮社刊)が受賞となりました。
本の読み手というのは大抵、大まじめなんだけれど、そこをずらして、書き手ではなく、主人公がふざけている。その頃合いがすばらしい。表題作は飛行機の緊急着陸で自分の名前を忘れてしまった主人公が、最初はほとんど無言で、最後には饒舌に話しだすというもの。その饒舌さの飛び具合が面白くて、名前と記憶という二つの中心を持った楕円が不規則に回転しているような印象を受ける。しかし、それが決して不愉快でないのは、トーンが一定して清潔であり、言葉が繊細に組み上げられているからだと思う。個性的な登場人物たちも、浮くことなくしっくりはまっているのは見事だ。
幾多の賞を受賞されている多和田さんは、絲山賞など進呈されても何もうれしくないとは思うけれど、今年のナンバーワン(と言ってもたくさん読んでいるわけではありません)ということで、読者のみなさまにはおすすめします。お正月に読む本を探している方はぜひ。
2006/12/27 水曜日
一晩寝たら風邪っぽいのは治っていた。心配していた強い雨もやみ、クーペで病院へ。ロドピン、バルネチール、メレリル、ジプレキサといった(私にとっては)強い薬がなくなった。躁は一段落。9月からだから長かった。
風が強い。高速では死んだワイパーが動いた。家に帰ってきたら家が揺れていた。ドアが鳴り、サッシが鳴り、換気ダクトが鳴り、配水管が鳴る。大賑わい。
街に出た。何を書きたいのか考えながら歩いた。買い物もちょっとした。水曜なのに金曜日の気持ちがする。年の瀬なんだなあ。
2006/12/26 火曜日
午前中、上毛新聞来宅。ゲラを受け取り、直す。
気のせいだと思うが風邪っぽい。咽喉が痛くて寒気もする。熱っぽいかどうかはよくわからない。でもごはんはちゃんと食べた。頭が痛いのは脳味噌が腐ってるからでしょう。暇なら寝とけって? おっしゃる通り。
ウチには体温計がない。あんまり好きじゃないのだ。熱があったら休もうと思って計ったときには平熱で、これは高熱に違いないと確信を持ったときには電池が切れている。薄情なやつだと思って捨ててしまった。熱なんて計ったって下がるわけじゃないもん。
体重計がないのも同じ理由。計っても痩せない。
2006/12/25 月曜日
先週までぎっしり予定を入れていたから余計かもしれない。「ダーティ・ワーク」の単行本初校ゲラが延びたので、暇になってしまった。暇になったからって抱えている二本の小説がぼこぼこ書けるわけもなく、今日は掃除や洗濯をしながら困っていた。もう一件、ペンディングだった打ち合わせも来年になってしまった。この調子で明日からも困ると家の中がぴかぴかになっちゃうな。詰めが甘いから大丈夫だと思うけれど。
明日の予定は天気の心配。明後日の通院日にどうも雨マークみたいなんが出てる。
2006/12/24 日曜日
例年同じことを言ってるのか言ってないのか忘れたが、私はクリスマスがだいっきらい。FMでも言ったけど、不必要にさびしい思いをさせられるのもイヤだし、やれカップルはデートしろとかやれ家族はチキン食えとかみんなが同じことをしろ的に世の中の雰囲気から言われるとむかつく。あまのじゃくと言われようと、心が狭いと言われようと、やせ我慢と言われようと、今日は休肝してパスタをうでて食うのだ。いつになったら廃れてくれるのかね、クリスマスイブとクリスマス。
じゃあ正月はいいのか。割と許せる。毎年仕事してんだけどね。
藤岡藤巻の「死ね! クリスマス」という曲があるらしいんだけど、まだ聴いていない。
サイン会でくたびれてぶっ倒れてる予定だったのが、意外に元気。40分歩いて車を取りに行って、ゲラを3本やっつけた。小説は相変わらずすすまない。
2006/12/23 土曜日
昨日、今日とサイン会に来てくださった方、ありがとうございました。字が汚くて本当にすみません。来られなかった方、また次回。書店さんからは「いろいろな作家を見ていますが、『また次もよろしくお願いします』というのは絲山さんだけですよ」と、営業マン根性の抜けないところを指摘されてしまいました。
さて。
皆様に応募いただいた「読者に聞け!/絲山よ何処へ行く」の結果です。
正解は……韓国と、セネガルです。韓国は講演会で3月に4〜5日、セネガルは紀行文の仕事で夏頃に2ヶ月間行く予定です。韓国は翻訳が多数出ているとどこかで言ったため、わかりやすいかなーと勝手に思っていました。セネガルの話題はしたことなかったですよね?
残念ながら、両方正解はありませんでしたが、韓国に4票、セネガルに貴重な1票をいただきました。約束なので何も出ませんがおめでとう!
圧倒的に多かった票はフランス17票、次がイタリア11票でした。イギリスとモンゴルは6票ずつで並び、珍しいところだとクリスマス島、キプロス、ホンジュラス、モーリシャスなどがありました。惜しいと思ったのが台湾とマダガスカルでした。
師走の忙しい時期に60票ものご応募、そしてメッセージをありがとうございました。
「また次回もよろしくお願いします」。
2006/12/22 金曜日
家にいるときは毎日太陽が山の向こうに沈むのを見ている。日が沈む場所が冬は南へ、夏は北へ移動していくのを見ている。
今日は冬至。明日からまた日が長くなると思うと嬉しい。早く日が暮れると早くから飲みたくなっちゃうし、朝暗いと仕事していても面白くないからね。
午前中に車を整備工場へ持って行った。
午後から下京。新潮社で取材を受けた後、今日は丸善、一泊して明日は青山ブックセンターのサイン会。これで今年、仕事で下京するのは最後。
2006/12/21 木曜日
まじめに働いているつもりでも、実は物探しに時間を取られていたりする。焦るとなかなか見つからない。本日の探し物はスイカ。さんざんカバンの類をひっくり返した後で、ちょっと前に着たコートのポケットから見つかりましたが。物探しのあとの散らかり方ってむなしいっすよね。
夕方、FMぐんまで生放送と収録。「絲山セレクション」はtheピーズの「なんも覚えてねー」。
その後、前橋の喚乎堂(書店)との忘年会。
天気が怪しいので(ウチのワイパーいつまでたったら直るのか)、前橋まで電車で行くことにした。両毛線に乗るのは実は始めて。そんなわけでスイカを探していたのでした。
2006/12/20 水曜日
正月の朝日新聞、正月の上毛新聞鼎談、小説すばるの藤岡藤巻鼎談、群像合評とゲラが四種類もまとめて来てびっくり。びっくりしている場合じゃないか。印刷所とともにフル回転だな。
今夜はカレと飲む予定、北陸以来。
体調はここのところとてもいい。不必要にクルマを欲しがったりしなくなった。でも減っていたタバコの本数は元に戻った。
書くことがほかにないので、今日はこのくらいで。
2006/12/19 火曜日
「読者に聞け!/絲山よ何処へ行く?」たくさんご応募ありがとうございました。近日中に集計して発表します。お楽しみに。
午後、新潮社へ。書店さんに置いてもらうサイン本作りと、新聞、雑誌5社インタビュー。一応、エスケイプ/アブセントは一昨日読み返しておいた。そうじゃないと、すっかり中身を忘れているので。私の場合は、忘れないと、次に行けないのだ。
今日は暖かいけど、夜は冷えるのかなあ。暖かい日の方がどんだけ着膨れていいかどうか悩む。や、着なくても膨れてるんですけどね。