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第九回 絲山賞

絲山賞の説明とこれまでの受賞者一覧につきましては、トップ→プロフィール→絲山賞について でご覧ください。私が勝手にここで選ぶだけなので何の権威も名誉もありません。受賞者ご本人にはここを読んだ親切な編集者が連絡して下さることが多いようです。

第九回絲山賞は由井鮎彦さんの「会えなかった人」(筑摩書房 2011年12月刊)に決まりました。

今年は文芸季評の関係でたくさんの良書に出会いましたが、一番面白かったのはこの本です。由井さんがどんな方か存じませんが、この作品は第27回太宰治賞を受賞したデビュー作です。違和感、そらぞらしさ、反復、NGワード、緻密さーー得体が知れませんがたくさん笑いも詰まっています。難解ですが破綻はない、しかも文体が清潔ときています。読む側にもかなりの技術が要求されます。次の作品はもう私の読解力を超えてわけのわからないところに行ってしまっているかもしれない。宇宙人が書いたような小説になるかもしれない。好き嫌いや評価は分かれるかもしれませんが、「注目に値する」という言葉は現在の日本文学に於いては由井さんのためにある言葉です。その意味で今回の絲山賞を謹んでさし上げたいと思います。


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