Diary

第13回絲山賞

第13回絲山賞は、都築響一さんの語る『圏外編集者』(朝日出版社)となりました。
絲山賞については、当サイトの「プロフィール」から「絲山賞について」をご参照ください。
 
仕事について語ることは、時代と社会を切り取ることだと思うのです。長年フリーの編集者として「取材をして、本をつくる」ことを続けてこられた都築響一氏によるこの本には、実際に自分で動いたからこそ発することができる、強い言葉がたくさん詰まっています。私はそれらを勇気のある、信頼に値する言葉として受けとめます。
 
私自身、いろいろなことを人と同じようには出来ないし、また人と違ったことがしたいと思って生きてきた人間ですが、多少なりとも時代の変化は感じています。「インターネットが全てを変えてしまった」この時代には、メディアがこれまでの常識に基づいて憶測することの多くは通用しなくなってしまいました。たとえば「地方で働くこと」や「地方から発信すること」もそうだと思いますし、アナログなこともそうです。私はそこに新しい面白さや手応えを感じています。都築さんとの面識はないですが聞き書きであるこの本を読んでいると、私は胸の中で対話が行われるような気がします。もっと出かけて行って人と話したい、話を聞きたい、そういう気力が湧いてきて、わくわくします。
 
もちろん今の時点で自分にはわからないこと、出来ないこと、ここは自分とは違うということも書かれています。それでも、この一年、私があまり失敗をおそれずに自分の手と足を動かしてがんばれたのはこの本が伴走してくれたお陰だと思っています。そこから得た貴重な繋がりや、今までに知り合えなかった人たちから教えてもらったことも、宝物のように思っています。
今回の絲山賞はとても個人的な感想かもしれませんが、この本と対話する読者の方々は、それぞれの切り口でいろいろな可能性を感じられるのではないかと思っております。拙い文章ですが講評とさせていただきます。


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