Diary

新しい小説の準備

次の小説(群像)のために、海外の小説について、誰かと話す必要があった。
もちろん、書き始めてからでいい。半年後か一年後に書きかけの小説の展開とその本を重ねてセッションができればいい。
できれば私の書いたものを知っている人で、作家ではない方がいい、そういう人がいないか探していた。たまたま講談社ではいなかった。
そしてみつけた。
私の小説を7本翻訳してくれたハンガリーの人だ。
「これから私が読んでは、遅いですか?」
彼女はそう言った。私のシリーズと同じ版元から、ハンガリー語にも訳されている、と。
どう言ったらいいだろう、そのときの嬉しさは。
雨戸を開けたときの眩しさや、梯子をみつけたような気持ちだ。

もう一本の新潮の小説も、早く主人公が歩いていた場所を探しに行きたくてうずうずしているのだ。
そいつのために、自分が何を知らなければいけないのか、まだわからない。
でも、なにか確実なものがある。

書き終わってしまったものは、自分の中では一秒でも早く廃(すた)れればいいと思う。


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