Diary

第六回絲山賞

この一年間で、私が読んだなかで一番面白かった本に「絲山賞」をさしあげています。単に私がこの日記の中で発表しているだけで、賞金も式典も、もちろん名誉もありません。(たまに、著者の粋な計らいで帯になることはありますが、権威が嫌いな私の賞に権威はないので騙されないで下さい)

第六回絲山賞は、ドナルド・キーン著 「日本人の戦争 作家の日記を読む」(角地幸男訳 文藝春秋刊)にさしあげたいと思います。
初出は1月売りの「文學界」、単行本は7月刊ですが、何度も何度も読みました。

内容は、開戦から終戦、占領下にかけての複数の日本人作家の日記を抜粋して編んだものです。
この本は、ドナルド・キーン氏でなければできなかった意義の大きい仕事のうちの一つになると思います。今とはかなり異なる時代の考え方がたくさん出てきますが、情報将校として米海軍にいた著者ならではの深い思索に基づく考察によって、2009年の私も理解をすすめながら興味深く読むことができました。
特に終戦から復興の間の人々の意識の劇的な変化、というのは、認識はあってもこれまで具体的なことを知る機会がなかなかありませんでした。「考え方を変えた」と発言するのは難しいことだからです。
日本人にとって、この本は貴重な財産になると思います。久しぶりに「書いて下さってありがとう!」とお礼が言いたくなる本でした。


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