Diary

第四回絲山賞

第一回は町田康氏と古処誠二氏、第二回は赤染晶子氏、第三回は多和田葉子氏が受賞。名誉もなければ本人に受賞の連絡さえしないいい加減な賞も今年で四回目、歴史だけは大江健三郎賞よりちょっぴり長い。さて今年は、
「ダンシング・ヴァニティ」筒井康隆氏
が、受賞となりました。「新潮」に連載されていたもので、単行本は08年1月31日発売とのこと。

最近の新しい人の小説で「一瞬だけ筒井康隆っぽいシーン」というのが見られます。それだけでも私なんかは読んでいてわくわくしてしまうのですが、本家はやっぱり一味も二味も違う。とてつもなく面白い。
「匍匐前進」「地雷原突破」には何度も笑ったけれど、反復されるシーンはしつこくなるぎりぎりのところで次の展開へと進み、そのシーンの切り替えの巧みさはやはり見事です。恋をすると宙を舞う娘たちのシーンもよかった。
全編を通して感じられる「おれ」の苦さが私は大好きです。いくらかは筒井作品を読んでいますが、「ダンシング・ヴァニティ」はその中でも傑出したものの一つだと思います。
破綻と調和、ばかばかしさとまじめさ、荒唐無稽な発想と繊細な作業、そういったものが全て揃っていて本当に楽しく作品世界の中で遊ばせてもらうことができます。
興味のある方はぜひ単行本を読んでみて下さい。


TOP