Diary

針のむしろの酔っ払い

今度のことで家族が集まって食事をすることになった。一堂に会するのは兄の結婚式以来である。祝ってくれるのはありがたいが、しかし時期が悪い。雑誌の発売直後なのである。あんな小説を読んだ後で、なんと気まずい会になることか、俺は今からいたたまれない気持ちである。読んでくれるな、と思うが無理だろう。両親は前にも書いたように性の「せ」の字が出てくるだけで機嫌が悪くなる。姉は大学でトーマス・マンを卒論にした堅いお人で、昔は小説を書いていた。唯一読まないでいてくれそうなのは兄である。この人はよろずいい加減だから期待がもてる。兄嫁や姉婿にもどうかひとつ堪忍してくださいという気持ちである。他人なら、或いは親戚でも少し血が薄ければ全然平気なのだが家族というとどうしても息苦しい。フィクションと言ってもやはりきまりが悪い。どうやって開き直ろう、いっそ最初っからべろんべろんに酔っぱらって行くのはどうかな、とか真剣に思う。


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