Diary

ボス

ボスがいる。白黒の猫で、体はすごく大きい。よく家のそばでぬうっと休んでいる。現職のボスかどうかは知らないが、顔に傷跡がたくさんあるのは猫社会では喧嘩の強い証拠らしいから有力者には間違いない。片目にひどい傷がある。近所には彼の子供とおぼしきそっくりな毛色の子猫が何匹もいる。
ボスは私なぞ見ても驚かない。傷のない方の丸い目でじっとこっちを見ている。よほど近寄ると「しょうもねえな」という感じで退く。逃げない。ゆっくり立ち去るだけだ。「猫ちゃん」なんて言って舌でも鳴らしたらひどい目に遭わされそうだ。可愛さの欠片もない、ペットにしたいなんて思わない。でも、なんとなくボスが私のことを「こいつ無害」と覚えていてくれたらそれでいいなあ。


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